都内の男性会社員は7月、新築のマンションのモデルルームで、不動産会社の担当者から「今なら5%の消費税で買える。8%になってから同額の物件を買うと、支払いが100万円ほど増えます」と説明されました。
男性は昨年、子どもも生まれ、そろそろマイホームと考えていたので、焦りを感じました。しかし、知り合いのファイナンシャルプランナーに意見を求めると、「急ぐ必要はない。住宅ローン減税が拡充され、増税後が得になる人もいる」と説明され、購入は見送りました。
住宅の消費税と、減税の仕組みはどうなっているのでしょうか。
住宅の消費税は、土地代にはかからず、建物代にのみかかります。今年10月以降に契約、かつ物件の引き渡しが来年4月以降になると、税率が8%に上がります。
住宅ローン減税は、10年以上のローンを組んで家を買う時に、支払った所得税や住民税からお金が戻る制度。額は年末のローン残高の1%で、期間は入居後10年間。まず所得税から引かれ、残った分があれば、翌年の住民税からも差し引かれます。
消費税が8%になるのに合わせ、減税制度は拡充されます。対象のローン残高の上限が増税前は2000万円だったのが、増税後は4000万円に。減税額はその1%だから、最大20万円から、40万円に倍増します。住民税から差し引ける額も、最大9万7500円から、最大13万6500円になります。
住宅ローン減税は、収入の多い家庭に有利とされています。計算上の減税額(ローン残高の1%)が多くても、納める税金がそれより少なければ、減税の恩恵が減るからです。
そこで、収入の少ない家庭に現金を支給する「すまい給付金」の導入も決まりました。額はローン残高とは関係なく年収に応じて決まり、来年4月以降の引き渡しで最大30万円、税率が10%となる予定の15年10月以降で最大50万円が支給されます。
二つの補助の効果は大きいです。みずほ総合研究所で、400万から1000万円の年収別に、平均的な住宅購入額などを仮定し、補助額(減税と給付金の総額)を試算したところ、すべての世帯で、補助額が消費税額を超えていました。同総研エコノミスト、大和香織さんは「ローンを組んで住宅を買うなら、消費税は実質かからないと考えていい」と話しています。
ただし、5%から8%になる時の増加分だけ比較すると、一部の世帯で、補助の増加額より、税金の増加額のほうが多くなりました。
年収500万円の世帯では増税額が補助額を28万円上回り、600万円の世帯では同様に11万円上回りました。つまり、増税前の購入のほうが得という結果が出ました。
一方、400万、800万、1000万円の世帯では、増税額を上回って、補助額が増えました。つまり、増税後の購入のほうが得でした。
結果は住宅価格や借入額などで変わるため、厳密なシュミレーションは、不動産会社やファイナンシャルプランナーなどに依頼すると良いです。
不動産コンサルタントの長嶋修さんは「住宅市場は常に変動している。インフレや東京五輪開催に向けた地価の変動なども予想される。数十万円の価格の変動はよくあることなので、消費税率の引き上げの影響は、あまり考えなくていい」と話しています。
結論は、「増税前に」と焦らず、納得できる物件を探すほうが良いということです。
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